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ERIC CLAPTONは僕が最も敬愛するミュージシャンの一人だ。CLAPTONについては10年以上も意図的に聴かなかった時期もあり、20年以上に亘る期間の内に三度見たそれぞれのライブへの思い、個人的な様々な思い出もあり、言うに言われぬ複雑な思いがあって、これまで書きたいと思ってもなかなか書けなかった。

彼のギターにはCREAMの昔から今に至るまでとても歌心がある。彼が吸収した膨大なブルースリックの蓄積もあるのだろうが、特に難しいことをやっている訳でもないのに、ちょっとしたソロにもメロディセンスが光るのはもう才能としか言いようがない。ルックスにも恵まれ、生まれながらにスター性を持っていたということであろう。また、偶然なのかこれまた持って生まれた嗅覚なのか、彼が係わることによって脚光を浴びたミュージシャンも多く、それがまた彼の成功の糧ともなってキャリアを築いてきた。LEON RUSSELしかり、JJ CALEしかり、BOB MARLEYしかり。彼は親友GOERGE HARRISONの妻PATTY BOYDとの不倫の恋、その失恋の痛手も手伝ったのかドラッグと酒に溺れシーンから姿を消した日々、「461 OCEAN BOULEVARD」での見事な復活。。。等々、人間くさい逸話にこと書かない。それがまたリスナーの思い入れを書きたてるのだ。彼には不思議に死の影が付き纏っているようにも思える。JIMI HENDRIX、DUAN ALLMAN、BOB MARLEY、GOERGE HARRISON、CARL RADLE、高層マンションからの転落事故で失った最愛の息子。。。彼は数々の挫折や悲劇を作品に昇華して前進し続けて来た。今やステージ上の彼の佇まいは円熟したエンターテイナーとしての風格を漂わせているが、それでも尚、どこか孤独の翳を引き摺っているように見えるのは僕だけだろうか?

CLAPTONは1945年イギリスのサリー州で生まれた。所謂婚前交渉から生まれた私生児で、幼い頃は母親を姉と言い含められ、祖父母によって育てられたという。2001年に発表した「REPTILE」のライナーノーツでCLAPTON自身が愛を込めて幼少の頃15歳も歳の離れた兄として接してくれた叔父の思い出を語っているが、そこに浮かび上がって来るのは内面に複雑な思いを抱えた孤独な少年の面影である。15歳でギターを手にした少年CLAPTONはBLUESの虜になっていく。とりわけ最新のスタジオアルバムとなる「ME & MR JOHNSON」全曲をカバーで取り上げ改めてその傾倒ぶりを満天下に示したROBERT JOHNSONには深く入れ込んだらしい。JOHNSON自身がほんの短期間故郷を離れている間に余りにも急激にギターの腕前を上げた為「CROSS ROAD」で歌われている如く、悪魔に魂を売ったという伝説を生み出したミュージシャンであるが、CLAPTONのインタビューなどを読んでみると、まるで一人で弾いているとは信じられないようなリフとスライドリックのコンビネーションが生み出すビートと、それ以上にシンプルながら象徴性の高いその歌詞にもCLAPTONは深く揺り動かされたようだ。その感動がCLAPTONのその後の人生を決めてしまったと言ってもいいのではないだろうか。

1994年以降のCLAPTONの充実ぶりには目を見張る思いがする。50歳を目の前にしてCLAPTONは更なるミュージシャンシップの高みに到達したように思う。同年発表した「FROM THE CRADLE」は全編を自身のルーツであるBLUESのカバーで埋め尽くした初のソロアルバムだった。特に、MUDDY WATERSそのもののように完璧なCHICAGO BLUES SOUNDを聞かせる「HOOCHIE COOCHIE MAN」、B.B. KINGを意識したと思われる「FIVE LONG YEARS」、FREDDY KINGになりきったかのような「I’M TORE DOWN」、「SOMEDAY AFTER A WHILE」辺りはCLAPTONのキャリアを通じてもっとも充実したプレイと言えると思う。そして9年ぶりのオリジナルアルバムとして1999年発表された「PILGRIM」は一転して内省的で抑えた中に深い感情の息吹を感じさせる名盤である。冒頭の「FARTHER’S EYES」から「RIVER OF TEARS」を聴くと喉の奥に詰まった塊がせり上がってくるような心持ちになる。そして「REPTILE」。ちょっと肩の力を抜いた余裕が感じられ、STEVIE WONDERの「I AIN’T GONNA STAND FOR IT」やJAMES TAYLORの「DON’T LET ME BE LONELY TONIGHT」といったカバーも含まれる。この「DON’T LET ME BE LONELY TONIGHT」が秀逸である。CLAPTONの歌もギターも最高に熱い。

「ONE MORE CAR、ONE MORE RIDER」は2001年のロサンジェルスのライブであるが、ここで聴くことができる「FARTHER’S EYES」・「RIVER OF TEARS」のテンションは想像を絶する。スタジオテイクを遥かに凌駕する鬼気迫る名演である。それでも、僕は、そんな堂々とした円熟のミュージシャンの顔の裏側に、未だに孤独な少年の面影を見る思いがするのだ。それ故にこそ、CLAPTONは僕にとって特別な存在であり続けているのだろう。

mojo

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60年代~80年代のロックを愛して止みません
賛否両論あって当然!
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